『ib』レビュー - 9歳の少女と挑む、奇妙な美術館探索ゲーム。
『ib』はこんな人にオススメ!
- ゆめにっきやUNDERTALEのような、奇妙でユニークな世界観のゲームが好き
- 登場人物の感情や背景が紐解かれるストーリーが好き
- 謎解きは好きだけど、カジュアルで難し過ぎないものが好き
奇妙な美術館に誘われた、9歳の少女の物語。
両親と美術館に訪れた一人の少女、イヴ。
初めての美術館にはやる気持ちを抑えきれず、一人で館内を巡り歩いていると、存在するはずのない巨大な絵画が展示された部屋にたどり着く。
「おいでよイブ」
気づくと館内には自分ひとり。誰もいなくなったのか、それとも先ほどいた美術館とは違うどこかに来てしまったのか…。美しくも妖しく並ぶ美術品の数々が、イヴを奇妙な世界へと誘う…。
冒頭はこんな感じで始まる。2012年にゲームクリエイターのkouri氏によって発表されたPC向けフリーゲームとして誕生した本作は、徐々にカルト的人気を得つつ、2023年3月には待望のswitch版発売に至るまでとなった。
カジュアルな難易度とボリュームの謎解き
本作は各部屋の仕掛けやパズルを解きながら探索する謎解きアドベンチャーゲーム。探索の途中で登場する人物たちとの掛け合いによってエンディングが変わるマルチエンディング方式を採用している。
謎解き×マルチエンディングと聞くと、「何回も同じ仕掛けを解くのが面倒くさそう…」と嫌厭する人も少なくないと思う。しかし、数多くの個性豊かな美術品が織りなす、ユニークで、キュートで、ちょっぴりホラーな謎解きは、それ自体に触れることが楽しく、周回プレイの苦痛はさほど感じなかった。
ホラーと呼ぶにはあまりに愛くるしいアート作品たち
本作は「ホラーゲーム」と紹介されることが多いが、あれをホラーといってよいのかどうか…。美術館に待ち構える全ての作品がイヴの敵として立ちはだかるならまだしも、どちらかといえば、ただ純粋にそこに存在するだけだったり、時にはイヴを助けてくれたり、ちょっかいを出しつつもイヴとのやりとりを楽しんでいるような、一見怖そうだけどどこか憎みきれない可愛らしいヤツらばかりなのだ。
もちろん、中にはイヴやその仲間に襲い掛かってくる美術品もいるものの、それは作品のうちごく一部に過ぎない。世界観こそ奇妙だが、実際にプレイしてみれば、悪いやつは”ほとんど”いないことがわかると思う。
頼もしくも、どこか怪しげな仲間たち
本作では2人の登場人物が、イヴと共に美術館の謎解きをサポートしてくれる。一人はボロボロのコートを羽織った、強面の人相に反してフレンドリーな姉御肌の「ギャリー」。もう一人は、フランス人形のような鮮やかなブロンドヘアを持つ少女「メアリー」。
様々な局面で謎解きを手伝ってくれたり、何気ない会話で緊張を和らげてくれる2人だが、2人ともどこか怪しげで、背中を預けるにはやや不安な気持ちになる。ギャリーは一見すると細身の男性だが、口調は女性そのもの。かと思えば、「ギャリーはイヴのお父さん?」というメアリーの問いかけで、改めて「あ、男なんだ」と気づかされる。一方のメアリーも、見るからに人間離れした華奢で美しい容姿ながら、会話の端々に見える無邪気さや好奇心のそれは、ある意味で人間以上に人間くさい性格。
様々な局面で見せる独特な個性と、道中の会話で見せる人間臭さが織りなす2人のキャラクターは、この作品の魅力に大きく貢献していることは間違いない。イヴを含む彼ら3人の結末はエンディングによって大きく異なるので、ぜひその全てを体験してほしい。
以上、『ib』をプレイした感想をまとめました。
私としては人生でこの作品に出会えてよかったと思える、魅力あふれるゲームの一つでした。価格もボリュームもお手頃なので、インディーズゲームならではの個性的で奇妙な世界観が好きな方にはぜひプレイしてみてほしい一作です。
本作は『ib公式サイト』からオリジナルのフリー版をダウンロードできるほか、コンソール版はPC(Steam)、そして2023年3月9日にはSwitchでそれぞれプレイが可能です。
『ib』(イヴ)
●ジャンル:ホラーアドベンチャー
●開発元:kouri
●発売元:kouri(STEAM/SWITCH版はPLAYISM)
●対応機種:
・PC (2012年2月27日)
・STEAM(2022年4月11日)
・SWITCH(2023年3月9日)
●公式サイト:https://kouri.kuchinawa.com/game_01.html